・GPSを用いた時刻比較方法

最初に、GPS衛星を用いたコモンビュー法(GPS-CV法)における時刻の比較方法を簡単に説明します。
GPS-CV法は、時刻比較を行う局(地点)間で、同時に同一の衛星からの信号を受信することにより、GPS衛星の時計の誤差を相殺して、高精度な時刻比較を可能とするものです。



上図で、あるGPS時刻(GPS t0)における、A、B地点にある時計の時刻(A tとB t)とGPS時刻との時刻差は、それぞれA地点:( A t−GPS t0 )、B地点:(B t−GPS t0 )であり、その差をとることにより、A地点とB地点にある時計の時刻差 △t =B t − A t が求められます。ここで、A tを日本標準時とすれば、この計算値がB地点にある時計の時刻と日本標準時との差となります。
(ただし上記では、A、Bの地点間の伝播遅延等の相違による数十ns程度以下の誤差を無視できるものとしています)

次に、実際の比較方法に関して簡単に説明します。
GPS-CV法に使用するデータは、電離層等による伝播誤差を無視できるものとしてGGTTSデータの内REFGPSのみとします。
各地点で測定したREFGPSデータと、同一日の同一測定開始時刻、同一の衛星番号のGPS-CV公開データ(当ホームページの公開データ)のREFGPSデータを引算することにより、その時刻における自局の基準時計と日本標準時との差を算出できます。
このとき、測定した衛星の仰角が低い場合は、アンテナの設置環境によりマルチパス等による誤差が大きいことがありますので、低仰角の測定データを用いる場合にはご注意ください。
また、GPS-CV法による日本標準時との時刻比較結果は、測定した時刻(測定開始時刻)での値(差)のみをご使用ください。これは、時計には時刻変動があるため、長時間にわたる時刻比較結果の平均値では、比較精度が悪く見積もられる可能性があるためです。

最後に、比較精度に関して簡単に説明します。
比較した結果の精度に影響するものとしては、受信機に関するもの、大気等の伝播遅延に関するものなどがあります。
 (1) 受信機に関するもの
マルチチャネルを使用するGPS受信機では、1測定あたりの測定データは複数個ありますので、その平均値の標準誤差(平均値の標準不確かさ)は、測定値の標準偏差を測定データ数の平方根で割ったものとなります。
マルチチャネルの受信機では通常8個程度の衛星を観測でき、その受信機の時刻比較精度は数十ns(カタログ値)ですので、その値は、数十ns/√8で、多く見積もっても30nsを超えないものになると考えられます。
 (2) 伝播遅延に関するもの
伝播遅延に関するものは、電離層遅延、対流圏遅延等があり、これらを合計したものは、数十ns以下となります。

上記のほかに測定精度に影響を与える誤差要因としてサニャック効果等がありますが、これらを総計した比較データの精度(誤差)としては、100ns以下になると推定されますので、タイムビジネスで規定する時刻比較精度(30ms)に充分に対応可能です。

ただし、この条件はGPS受信機が測定した点(ケーブル端)でのものであり、実際の基準となる時計の時刻との比較値ではないことへの注意が必要です。基準時計の時刻の比較値は、この比較値に対してケーブル遅延を考慮してください。